ぼんやり考察してみよう

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ドント・スリープ

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◆ドント・スリープ

評価:良作

点数:40点

ネタバレなし

製作年:2016年
製作国:アメリ

★あらすじ
眠ると鬼婆がやって来るという新たな恐怖を描いたホラー。米国内で健康体の人間が睡眠中に死亡する事例が多数発生。原因は不明で「悪夢死」として世間を騒がせていた。アルコール依存症だったベスもまた、毎晩悪夢にうなされていたが……。

★一言感想
「ドント・〇〇」シリーズの一作です。
ドント・ブリーズの便乗邦題でありまして、原題は「DEAD AWAKE」となっております。

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眠ったら死亡。

何々してはいけない、でお馴染みのドント・〇〇シリーズの中でも、本作は屈指の難易度を誇るのではないでしょうか。ただでも、日本の平均睡眠時間はOCED加盟国中ブッチギリの最低水準。ツイッターのタイムラインを眺めれば、眠いの文字がそこかしこに溢れております。その上、眠れるはずの時間にも眠ったらいけないだなんて、無茶を言わないで欲しいものです。

眠ったらどうなるのかと言えば、睡眠麻痺――俗に言う、金縛り状態――になってしまいまして、寝床に鬼婆が忍び寄り、絞殺されてしまうのですね。眠ったら死亡、眠らなくてもいずれ死亡となれば、どうする事もできません。実質、打つ手なしと言えましょう。

睡眠は三大欲求の一つであり、多くの生物にとって必要不可欠な行為。それを封じて死へと誘う鬼婆は、睡眠不足と過労死を実体化した存在なのでは? なんて、日本的な読み解き方をしたくなってしまいます。

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度重なる鬼婆の悪夢、息苦しい目覚めに疲弊したベスは医療機関を受診するのですが、Dr.サイクスは、単なる睡眠麻痺であり、無害なので気にしないように、と言うばかりでした。何とも適当な対応であります。

本作で描かれた症例に医療従事者として真摯に向き合うのでしたら、まず、息苦しくて目が覚める時点で単なる睡眠麻痺ではなく、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。専門の医療機関での検査を勧めた方がよいでしょう。重症のようでしたら、CPAPによる治療が必要になってまいります。気管支喘息の合併も疑われますので、呼吸器機能の検査も行い、場合によっては、アドエアディスカス、レルベア等の吸入薬の処方も考えなければなりませんね。

閑話休題

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本作、巷では随分評価が低く『つまらない』『全然怖くない』『邦題がドント・スリープなのに寝落ちした』などなど、散々な言われようですが、私は結構好みだったりいたします。

目覚めている限りは外部から干渉する術はなく、眠っている限りは身動きが取れない。一見付け入る隙のない鬼婆に、どのように対処していくのか? は純粋に興味を惹かれます。鬼婆の存在を信じて患者を救おうとするはみ出し者のDr.ハッサンと、意地でも鬼婆の存在を認めようとしない現実主義者のDr.サイクスの対比も面白いです。

また本作、只のB級ホラー映画と見せかけまして、少し深読みすれば、味わい深いテーマを内包しております。私が最も本作を評価したのはその点でありまして、作中のDr.ハッサンの言葉『感情は現実ではない。脳の中にあるものだ。脳はあなたが制御できる』は名言として心に残りました。

エンディングテーマ「WAIT FOR THE NIGHT」も、なかなか考えさせられる、良い曲です。日本語訳が入っておりますので、お暇がありましたら是非、スタッフロールも最後までご覧くださいませ。