ぼんやり考察してみよう

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切り裂き魔ゴーレム

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◆切り裂き魔ゴーレム

評価:良作

点数:80点

ネタバレあり

製作年:2016年
製作国:イギリス

★あらすじ
ビル・ナイ主演によるミステリーサスペンス。
ロンドンで連続猟奇殺人事件が起こる。
容疑者として4人の名前が挙がるが、ひとりは既に別の事件で死亡していた。
事件を追う刑事・キルデアは、この容疑者のひとりを殺害したという女の裁判に出向くが……。

★一言感想
原題は「THE LIMEHOUSE GOLEM」

舞台は19世紀末のロンドン。
仄暗く埃の煙る街並みが、いい味を出しております。

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※正に、シャーロック・ホームズの世界です

本作はあらすじにもあります通り、ミステリーであり、サスペンスです。
連続殺人犯ゴーレムを追い、東西奔走するキルデア警部補が渋くて素敵です。
キルデア警部補の名推理が炸裂する! ……というわけではなく、捜査は、クリー夫人ことリジーへの面会と容疑者の筆跡鑑定くらいしかやっていないのはご愛敬。
資本論』でお馴染みのカール・マルクスなど、実在する歴史上の人物が容疑者になっているのは面白いですね。

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※何気に再現度の高いマルクスさん

終盤でついに明らかになるゴーレムの正体は「びっくりした!」というよりは「やっぱりか!」という感覚であります。ジョン・クリーが書きかけていた脚本『不幸の接点』を、クリー夫人が勝手に上演した……遅くともそのあたりで、犯人が何者なのか、察しがついてしまいますね。ですが、犯人がすぐにわかってしまうのは、伏線が過不足なく、綺麗に並べられている証明とも言えますので、作品の瑕疵にはなりません。むしろ、誇ってよいでしょう。

また、私がイチオシしたいのは、犯人が判明してからの演出です。
キルデア警部補、リジー、ダン……大衆劇場を舞台に、それぞれの思いが交差して迎える終幕は芸術的で、サスペンス映画らしからぬ、独特の余韻を見る者に残します。
邦題からは、適当な作りのC級ホラーの印象を受けてしまいますが、いい意味で予想を裏切る良作でありました。

鑑賞後に知りましたが、英国のミステリ小説が原作だそうで、完成度が高いのも納得ですね。
私も劇場に集う観客たちの一人となり、ダン・リーノに拍手を送るといたしましょう。