ぼんやり考察してみよう

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十二人の死にたい子供たち

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◆十二人の死にたい子供たち

評価:良作

点数:65点

ネタバレあり

製作年:2019年
製作国:日本

★あらすじ
その日、12人の未成年たちが、安楽死を求め廃病院の密室に集まった。
「みんなで死ねば、怖くないから」 ところが、彼らはそこで13人目のまだ生あたたかい死体に遭遇。突然の出来事にはばまれる彼らの安楽死。あちこちに残る不自然な犯行の痕跡、次々起こる奇妙な出来事。
彼らだけしか知らない計画のはず。まさかこの12人の中に殺人鬼が……?
死体の謎と犯人をめぐり、疑心暗鬼の中ウソとダマしあいが交錯し、12人の死にたい理由が生々しくえぐられてゆく。

★一言感想
原作は冲方丁の同名小説となっております。
尚、筆者は原作未読、予備知識なしで鑑賞いたしました。

廃病院を舞台とした密室推理劇であります。
登場人物は十二人と、この手の作品では多い方ではないでしょうか。

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『集い』の参加者たちが続々と廃病院にやってくる……実はこの導入部分こそが本作の一番重要な場面となっているのですが、映像作品ならではの伏線の自然な見せ方がよいです。小説作品だとどうしても伏線が説明的になってしまいますので、映画の強みを存分に活かした演出と言えますでしょう。

アンリはサトシの「十二人全員が……」発言を聞いて、サトシが『集い』を繰り返し行っていた、と看破しましたが、鑑賞している私は「十二人全員が……」発言を聞いた瞬間、最後に、主催者は既に故人だった、みたいなオチがつくのかな、などと考えてしまいました。全員がこれで良かったんだ、と無事帰宅した後で、ふと主催者の素性を調べたら、うわ、院長の息子のサトシって、集い以前に、あの病院で死んでるじゃん……という。

「なななな、なんであんな集いを」
「もしかして、同じような境遇の仲間が欲しかったんじゃ」
「いや、そうは思わない。(中略)生きて欲しかったんだよ、僕らに……」

で、一同しんみりする、みたいな、そんな結末。
勿論、最後の台詞はシンジロウことあらたまっけんゆーです。
まーそうしたら積み重ねてきたミステリが足場から大崩壊してホラーになってしまいますけれどもね。作中、サトシがずっと超然としていたのが気になっていたせいか妙な妄想が……

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正直なところ真相が入り組んでいて地味めな上に、そもそも犯人がいないに等しいので事件解決のカタルシスがあまりなく、肩透かし感はあるのですが、その代わり、ハッピーエンド感がマシマシとなっておりますので、これはこれでありだと思いまする。最終的に『集い』を中止するに至るまでの各人の心理描写は少し物足りない気はいたしますが、そこは映画ゆえ、尺の都合もありますので仕方ないでしょう。死にたいは生きたいの裏返し、ともよく言われますものね。

スタッフロールと同時に、時系列順で物語を振り返ってくれるのも、最後の総まとめと言いますか、親切設計でよかったです。

それにしても、未成年の喫煙は法律で禁止されておりますって、そこまで書かないといけないのですか……って、思わず突っ込んでしまいました。