ぼんやり考察してみよう

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天使にショパンの歌声を

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◆天使にショパンの歌声を

評価:普通

点数:75点

ネタバレあり

製作年:2015年
製作国:カナダ

★あらすじ
廃校の危機に陥ったケベックの小さな音楽学校を舞台に、そこでたくましく生きる女性たちの姿を描いた感動作。
閉鎖の危機に直面した校長・オーギュスティーヌは、ある秘策を考えるが……。
ショパンモーツァルトなどクラシックの名曲が物語を彩る。

★一言感想
原題は「LA PASSION D'AUGUSTINE」
直訳するなら「シスターオーギュスティーヌの情熱」でしょうか。
原題と邦題で、随分印象が違いますね。

1960年代、カナダはケベックカトリック音楽学校を舞台にした物語です。
最近代替わりした総長は、金勘定が専門の経営者であり、音楽教育の意義を理解せず、予算を圧迫する金食い虫として疎ましく思っています。ついでに前総長の寵愛を受けていた校長のオーギュスティーヌも気に入りません。新総長の意向により、音楽学校は売却、廃校の危機に晒されます。そんな折、オーギュスティーヌは久々に再会した姉のマルゴに、姪――アリスを預けられるのでした。

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※アリスは、学期途中に転校生として編入することになります

このアリスさん、予告編では問題児などと言われておりますが、少しお行儀が悪いくらいで、別に問題児でもありません。授業中の酷い落書きはクラスメイトに濡れ衣を着せられただけで、吃音で言葉に詰まる友達を庇って一緒に怒られたり、ホームシックの中コンクールに向けて懸命に練習したり、普通に良い子です。夜遊びに出たのも友達を元気づけるため、ですものね。問題児と言うならば『黒い箱のアリス』のアリスさんの方が同じアリスでも余程……もごもご。

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※時代の流れに伴い、教会にも変革の波が押し寄せます

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※God helps those who help themselves.

手を尽くして廃校を防ごうとするオーギュスティーヌとシスターたち。
規律正しい生活には馴染めないながら非凡なピアノの才能を見せるアリス。
映像も音楽も余すところなく美しいです。

アリス役の女の子、本人が実際に演奏していると思うのですが非常に上手いです。いくらなんでも上手過ぎでは? コンクールでのEtude10-3『別れの曲』は聞き惚れてぼーっとしてしまいました。そしていつの間にかエンドロールが流れているという。

エンターテイメント作品には得てして、わかりやすい物語の結末が求められます。それは胸のすくような文句のつけどころのないハッピーエンドだったり、ただただ悲しくやりきれないばかりのバッドエンドだったりします。その意味では本作は異色で、ハッピーエンドともバッドエンドとも言えない、玉虫色の結末を迎えます。喩えるならば、どんよりとした曇り空に覗く太陽、でありましょうか。

酸いも甘いも噛み分けたオーギュスティーヌとアリス。彼女たちが新しい時代をどう生きていくのかは想像に委ねる他ありませんが、これはこれで現実的で、趣のある決着なのかも、とも思いました。
映画作品として面白いかどうかは微妙なのですが、個人的には好きです。