ぼんやり考察してみよう

日々考えたこと、映画感想、評価などを記しておくブログです。WPから移転しました。

キル/オフ

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◆キル/オフ

評価:微妙

点数:50点

ネタバレあり

製作年:2016年 製作国:フランス

★あらすじ
砂漠に囲まれた田舎町を訪れたサラリーマンが、少女誘拐殺人事件の犯人に仕立て上げられ、理不尽な襲撃を受ける。ラスティ・ジョイナーが屈強な肉体で死闘を繰り広げるサスペンス・アクション。

★一言感想
原題は「SAM WAS HERE」

うーん……何でしょうね、とても感想に困る作品です。
謎だらけのまま始まり、謎だらけのまま終わるので、非常にもやもやします。
はっきり言ってしまえば、奇妙な描写をするだけして、何も説明しないまま放り投げる意味不明な映画なのですが、意味不明と切り捨てるだけでは面白くありませんので、私と同じく、この映画を見てもやもやしてしまった方々のために、いくつかの思わせぶりな描写に対して、考えられる解釈を書いておくといたしましょう。

■謎1.そもそも、サムは殺人犯なのか?

f:id:unknownhuman:20180601021811p:plain サムは作中、凶悪殺人犯として命を狙われます。
サム本人は身に覚えがないと言っていますが、本当なのでしょうか?

●解釈1.サムは正気を失った殺人犯である。

サムには妻と娘がいるようですが、サムの発言の中に出てくるだけであり、妻も娘も、どちらも本編には登場しません。サムが正気を失っていたとしたら、その存在自体が危うくなります。サムの妻と娘が現実には存在しない根拠として、サムが妻として連絡を取っているリサは、エディのラジオで『サムの事など知らない。夫は5年前に死亡している』と話しています。サムは妄想の果てに存在しない妻と娘を作り出し、少女を娘として誘拐し、助手席に乗せていたクマのぬいぐるみを渡そうとしますが、自分の世界を否定されて殺してしまったと考える事もできます。

・解釈1-A.町民は狂っていたのか?
サムを正気を失った殺人犯とした場合、町民の行動に一定の正当性はあります。
物語が我々の見たままなら、異様なマスクを被ってサムを襲撃している事などから、町民たちも少なからず狂っていたのでしょう。サムの妄想が含まれた世界なら、サムが見たものすべてが信用できなくなり、実質作品内の描写があてにならなくなるため、実際には善良な町民たちだった可能性もあります。

●解釈2.サムは正気であり、殺人犯ではない。

サムが正気だとしたら、狂っているのは誰なのでしょう?

・解釈2-A. 狂っているのはエディとこの町の住人
エディのラジオ番組により洗脳を受けた町民たちが、集団でサムを抹殺しようと動いた。この解釈を採用するなら、少女を殺したのはエディ、もしくは無関係の第三者になります。

・解釈2-B.狂っているのは世界そのもの
不思議の国のアリスが如く、サムは現実とは違う異世界に迷い込んだ。そこは、サムが殺人犯として狙われる狂気の世界でした。

■謎2.空に浮かぶ赤い光は何なのか?

f:id:unknownhuman:20180601021838p:plain 作中で度々、空に太陽ではない赤い光が浮かんでいる描写があります。
あの赤い光は一体何なのでしょうか?

●解釈1.狂気の象徴

謎1の解釈1を採用するなら、赤い光は、サムの狂気のメタファーなのかもしれません。もしくは、あの赤い光こそが全ての元凶で、見た者に狂気をもたらしてしまう、とも考えられます。サムも、エディも、他の面々も、赤い光にやられて狂ってしまったのかもしれません。

●解釈2.異世界の証

謎1の解釈2-Bを採用するなら、空に浮かぶ赤い光は、ここが現実世界とは違う異世界である証明になります。

■謎3.民家の天井にフォークが刺さっているのは何故か?

f:id:unknownhuman:20180601021911p:plain 民家の天井に、意味ありげに刺さったフォークは何を意味しているのでしょうか?

●解釈

赤い光と同じく、狂気の象徴か、異世界の証明と考える事ができます。この場合の狂気とは、サムが狂っているか、町の住民が狂っているか、もしくは両方が狂っているか、です。芸のない解釈になってしまいますが、何せ投げっ放し作品ですので、一つの答えを導き出すには無理があります。

■謎4.エディとは何者なのか? 怪文書をばらまいた理由は?

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●解釈1.サムに罰を与えようとする、または陥れようとする一般人

エディは少女誘拐殺人犯であるサムを罰しようとして、または無実のサムを冤罪で陥れようとして、ラジオ番組で煽り、怪文書を撒いて、洗脳した町民をけしかけました。

●解釈2.エディとサムは同一人物である

某映画のように、全てはサムの精神世界の出来事なのかもしれません。サムは少女を殺していますが、手を下したのはサムの中にいるサムと言う名の別人格です。エディはそれを気付かせるため、新聞記事を見せたり、殺害映像を見せたりして、真相にたどり着くよう誘導します。だから『エディはすべてお見通し』なわけです。
襲撃者のマスクを剥ぎ取ったら、エディが振り向いたら、そこにはサムと同じ顔があったのではないでしょうか? サム以外で唯一、直接素顔を晒している老人の存在がネックですが、サムの中に存在する、ユング心理学で言うアーキタイプ、グレートマザーであるなどと適当な解釈でお茶を濁しておきましょう。



あれこれと思いつくままを書き連ねたら、随分と長い感想になってしまいました。
実質『解なし』の本作ではありますが、あなた様の解釈はどのようなものでありましょう。お暇がありましたら、是非お聞かせください。