ぼんやり考察してみよう

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パンズ・ラビリンス

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パンズ・ラビリンス

評価:名作

点数:35点

ネタバレあり

製作年:2006年
製作国:スペイン/メキシコ

★あらすじ
再婚した母に連れられ、山中でレジスタンス掃討の指揮をとる冷酷な義父のもとへとやって来た空想好きの少女は、やがて残酷な現実世界から逃避し森の中の不思議な迷宮へと迷い込んでいくが……。

★一言感想
ダークファンタジーという言葉がこれほどしっくりくる作品もなかなかないのではないでしょうか。
物語冒頭、迷宮への導き手として妖精が登場するのですが、その見た目は妖精というより昆虫めいていて、どう見ても羽の生えたナナフシ。カマキリにも似ているやもしれません。後作のダーク・フェアリーに登場する妖精も気味の悪い姿形をしておりますことから、どうやらギレルモ・デル・トロ監督は妖精を世間の抱くイメージ通りに、可愛らしく描写するつもりはないようです。

妖精のステロタイプと言えば、手のひらに乗るくらいのサイズをした、羽の生えた少年少女なのですけれども、ね。

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映像は徹頭徹尾美しく、雰囲気は抜群であります。小道具の一つ一つからも、製作陣のこだわりが伝わってまいります。音楽も素晴らしく、メインテーマとなる子守歌の物悲しい旋律は、物語の展開も相俟って、強く心に残ります。

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さて、ここからは本格的にネタバレ満載でありますゆえ、未見の方はブラウザバックを推奨いたします。

本作の結末には、二通り、解釈の余地があります。

◆オフェリア王女即位解釈

オフェリアはパンから与えられた三つの試練を見事乗り越えて、王女として凱旋する資格を得た、とする解釈です。なんと言いますか、そのままの解釈でありますね。

最後の試練は少し意地の悪いものでしたが、無垢な心が道を切り開いた、と言えますでしょう。 現実世界のオフェリアは非業の死を遂げたように見えますが、その魂は本来あるべき魔法世界へと還り、末永く幸せに暮らしました……そんな結末であります。

◆オフェリア空想没入解釈

本作の非現実的な、所謂ファンタジーの描写は全てオフェリアの生み出した空想だった、とする解釈です。

息子を取り戻すべくオフェリアを追ってきたビダル大尉ですが、大尉からはパンの姿が見えていない描写がありまして、ここがこの解釈の肝であります。オフェリア以外の人間にはパンが見えていない、と言うよりは、そもそもパンなんて元から存在しない、とするのが妥当でありましょう。
マンドラゴラを火にくべた直後に具合が悪くなったのも偶然です。むしろ具合が悪くなった原因は、オフェリアの度重なる奇行や、ビダル大尉がオフェリアに掴みかかったりした事による強いストレスにあるのではないでしょうか。また、肝心な時に優秀な医師がいなかったのも無関係ではありますまい。
幻は幻に。姿のない異界の住人たちは、幻に還る、といったところでありましょうか。
この解釈では、本当に救いのない、悲しい物語になってしまいますね。

果たして本作は、オフェリアが見事試練を乗り越えて王女として凱旋するハッピーエンドの物語なのか、或いは現実逃避の果てにたどり着いた救いのないサッドエンドの物語なのか。
皆様の目には、どのように映りましたでしょうか。