ぼんやり考察してみよう

日々考えたこと、映画感想、評価などを記しておくブログです。WPから移転しました。

フード・インク

f:id:unknownhuman:20200219153619j:plain:w211:h300

フード・インク

評価:なし

点数:なし

ネタバレあり

製作年:2008年
製作国:アメリ

★あらすじ
アメリカ人の食について、その基本となる食材がつくられていく過程にスポットを当て、警鐘を鳴らすドキュメンタリー。人々の大量消費を支え、さらなる低価格化を実現していく中で効率化が進められ、その結果として現代の農業が大企業による“工業化”された生産システムに支配されている驚きの実態を明らかにしていくとともに、利益優先の裏でいかに健康へのリスクが軽視されているかを軽妙なタッチで告発していく。

★一言感想
原題は邦題と一緒であります。

一言で説明するなら、大企業が利益と効率を過剰なまでに追求した果ての歪みが消費者に押し付けられておりますよ、というお話しです。食を武器に世界を牛耳る大企業が生まれれば、原料となる食材の生産ラインも大量に必要となります。大企業はその圧倒的なまでの購買力を行使して、一次産業の従事者を、大企業の傀儡にしてしまうのです。大企業と契約を結んだ養鶏業従事者の証言により、企業の横暴が明らかとなり、寡占、肥大化の弊害が浮き彫りになります。このあたり、日本で言いますなら、コンビニエンスストアの本部とフランチャイズオーナーの関係を想像していただければわかりやすいでしょう。

鶏は、より早く大きく育つよう、消費者の好む胸肉が増えるよう、品種改良と言う名の魔改造が行われた結果、バランスの悪い体つきになってしまい、自力歩行する事すらかなわず、数歩でよろけてひっくり返ってしまう有様。いや、別に歩けなくてもいいんです。どーせ人間が〆て食べてしまうのですから……って、そういう問題じゃなく、生物として不自然です。

そう言えば、ファストフード業界には以前から、パテの肉にミミズが使われている『ミミズバーガー』ですとか、品種改良により奇形化した『足が三本の鶏』なんて都市伝説のような黒い噂も絶えません。まあ、それら自体は根も葉もないデマなのですが、こういった作品を観てしまうと、火のない所に煙は立たぬ、とも思います。


f:id:unknownhuman:20200219225945p:plain

利益と効率の追求は、時に恐ろしい結果を生みます。資本主義と覇権主義が幅を利かせるこの世界では、真の意味で持続可能な社会を作るのは、なかなか難しいものがありましょう。

経済の永続的な発展とは、生産と消費のサイクルが拡大、加速し続ける事に他なりません。が、常識で考えれば、そんなものがいつまでも続く筈はありません。
大量生産、大量消費の行き付く先は資源の枯渇と人心の崩壊です。勿論、人間の提供するサービスや、新たな視点のイノベーションによって付加価値の創出はできましょうが、いつしか地球は、ゼロサムゲームに限りなく近い環境になってしまう事でしょう。

……上の段落だけ読みましたら、どうも筆者が社会主義者共産主義者のように見えますが、別にそういうわけではございません。幸福は市民の義務です

社会主義はともかく、純粋な共産主義ともなると人間には不可能でありましょう。良くも悪くも、欲望によって発展してきたのが人間なのですからね。ベンサムの提唱した最大多数の最大幸福を念頭に置きつつ、先進諸国が率先して、修正資本主義の修正の度合いを強めていく事こそが、現実に近い解決策なのでしょう、と、これは自論ですけれども。

f:id:unknownhuman:20200219230046p:plain

なんだか大分話が逸れてしまいました。たまには、こうして色々と考えさせられる、社会派なドキュメンタリー作品もよいものでありますね。

本作では、低コストで大量生産したコーンを牧草の代わりに牛の飼料にしまくったせいで、病原性大腸菌が発生してしまい、その結果、幼い子供の命が奪われた事例も取り上げられています。そう言えば、日米FTA絡みで、日本は要りもしないコーンを大量に買わされておりましたね。近年では、日米FTAの締結で牛肉が安くなる、なんて、どこまでも都合のよい箇所だけ切り取ったような暢気なニュースも聞かれますが、ま、本作を見る限り、どう考えても喜んでいる場合ではありますまい。

尚、本作で諸悪の根源の如く描かれております巨大企業モンサントは、現在没落してはいる模様で、少し留飲は下がります。環境活動家たるグレタさんも毀誉褒貶ありつつ、アジアの片隅で生きる私がその名前と活動を知るくらいには大きな潮流を巻き起こしました。また、マイクロプラスチックによる海洋汚染の深刻化から、脱プラスチックも進んでおります。消費者の環境への意識の高まりが企業を動かして、少しでも、地球と人間に優しい世界が訪れる事を願ってやみません。