ぼんやり考察してみよう

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トレーダーズ

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◆トレーダーズ

評価:良作

点数:60点

ネタバレあり

製作年:2015年 製作国:アイルランド

★あらすじ
大金を懸けた1対1の殺し合いゲームを描いたアクションスリラー。
エリート金融マン・ハリーは、金融不況を理由に突然会社から解雇されてしまう。
ちょうどその頃、彼の旧友・ヴァーノンは、新たなインターネット事業“トレーダーズ”を考え出していた。

★一言感想
原題は邦題と一緒であります。

ハリー、ヴァ―ノン、ケヴィンは金融会社に勤務する知り合い同士でしたが、不況の煽りで全員失業してしまい、経済的に困窮します。
それから間もなくして、ケヴィンは自家用車で木に衝突して死亡。
表向きは事故死ですが、ハリーとヴァ―ノンは、おそらく自殺だろう、と考えるのでした。

ヴァ―ノンは経済的理由による自殺に着想を得て『トレーダーズ』を考案、ディープウェブにシステムを構築します。

『トレーダーズ』のルールは以下の通り。
0. トレード用の現金と自筆の遺書を用意する
1. 緑色のスポーツバッグを目印に待ち合わせをする
2. 店のトイレで現金を確認して、ボディチェック、携帯電話を交換する
3. バスで何処か遠い、人気のない場所まで向かう
4. 一緒に墓穴を掘る
5. 決闘を行う、敗者は墓穴へ

要は、有り金全部賭けて、合意の上で決闘をしよう、というわけです。
それこそ、ラスベガスのカジノで赤か黒に全財産賭けた方がマシなのでは……と思ってしまいますね。

このルールを考えたヴァ―ノンは、元は技術者であり、どこからどう見ても武闘派には程遠いぽっちゃり系で、そのギャップには困惑するやら微笑ましいやら。
ヴァ―ノンはトレード……つまりは決闘に固執しているようですが、何を思ってこのルールを考えたのでしょうか。
この野蛮極まるルールでは、主な参加者は、元軍人、格闘家崩れ、喧嘩無敗の不良など、何れも、向こう見ずな腕自慢ばかりになるでしょう。こう言ってはなんですが、ヴァ―ノンでは、天地がひっくり返っても勝てそうにありません。

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※どう考えても勝てそうにない風貌のヴァ―ノンさん

実際、作中でも本気で殺す気のないハリーに不意打ちを仕掛けたにも関わらず、自爆するような形で負けて大怪我を負い、最後は命乞いまでする始末です。

また、このあたりを細かく突っ込むのは野暮ですが、トレーダーズのルールに従って勝者になったとしても、その後平穏無事に暮らしていけるかは疑問の残るところです。
いくら自筆の遺書があるとはいえ、所持金がどこかに消えていて、明らかに他殺であろう死体が出てきたら、警察も黙ってはいないでしょう。それにもしかしたら、賭け金を水増しするために、盗んだ金、借金をトレードに持ち込んでいる参加者もいるかもしれないので、紙幣の出所から足がつく可能性もあります。

私見ながら、ヴァ―ノンは自分が危険を冒してゲームに参加するのではなく、システム開発者の立場を活かして、元締めとして君臨するのがベストだったと思います。 まず現金を仮想通貨に変換して『トレーダーズ』システムに登録したIDから仮想通貨の秘密鍵を暗号化した暗号鍵を発行、お互いは決闘前、現金の代わりに、暗号鍵を認証、額面を確認する。 勝者が決まり、現金を引き出す時、暗号鍵を秘密鍵に変換する過程で、賭け金の何パーセントかをシステム利用料名目でマージンとして差し引く……とか、他にいくらでもやりようはあったはずです。
ヴァーノンは立ち回り次第では、死なないどころか、十分大金を掴むチャンスはあったと思いますので、勿体ない限りであります。

頑張れヴァーノン、負けるなヴァーノン。
来世ではもっと上手くやりましょう。
ヴァーノン、鬱陶しいけどおっちょこちょいで、なんだか憎めない奴でした。
謹んで、彼を本作のマスコットに認定いたします(おい

金の魔力に魅せられ、次第にトレードに深入りしていくハリー、開発者とは思えぬ空回りぶりで、泥臭く奔走するヴァーノン。
派手な演出こそありませんが、二人の行く末が気になる、楽しい作品でありました。