ぼんやり考察してみよう

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ドント・ヘルプ

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◆ドント・ヘルプ

評価:微妙

点数:70点

ネタバレあり

製作年:2017年
製作国:メキシコ

★あらすじ
グリーン・インフェルノ』の脚本家、ギジェルモ・アモエドが監督を務めたスリラー。ある夜、強盗の3人姉妹は上院議員の家に侵入し、金を盗もうと計画。首尾良く議員夫婦を椅子に縛り、金を手にしようとしたその時、地下から奇妙な叫び声が聞こえる。

★一言感想
原題は「THE INHABITANT」

例によって例の如く「ドント・ブリーズ」の便乗邦題であります。
ですので、邦題が内容と合っておりません。

ある議員の邸宅に窃盗に入った三姉妹でしたが、お目当ての金庫の中身は空っぽ。彼女たちはなし崩しに窃盗から強盗に方針を変更、家の主である夫婦を縛り上げて銃を突きつけ、力技で現金を奪います。尚、三姉妹は素顔を晒したまま犯行に及び、夫婦の前でもお互いを本名で呼び合います。素性を隠す気がまるでありません。

そうした杜撰な強盗の最中、地下室にて監禁、拘束されている娘、タマラを発見。年端もいかない娘を薄暗い地下室に縛り付けておくなんて、とんでもない両親だ、と、虐待を受けた過去を持つ彼女たちは自らに重ね合わせて憤慨。強盗団とは思えぬ正義感から、タマラを放っておけず、救出するために拘束を解いてあげるのでした。とはいえ、タマラが地下室に監禁されていたのには相応の理由がありまして……彼女は悪魔、それも40の軍団を統べる大悪魔にして大いなる侯爵、アモンに憑りつかれてしまっていたのです。

そんなわけで、あらすじからは想像がつきませんが、本作は宗教色の濃い、悪魔祓いの物語であります。登場人物の名前も全員、聖書を意識しているようですね。

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タマラに憑りついた悪魔アモンは幻覚を見せて、過去の心的外傷を抉る精神攻撃を仕掛けてくるのですが、世の中そうそうきついトラウマ持ちはおりませんよ。……おりません、よね?(不安になる)作中の強盗三姉妹は壮絶な過去を背負っておりますが、平凡な過去しかない人間をかどわかすのは骨が折れそうだな、などと考えてしまいました。

ともあれ、wikiによればアモンは「自分を召喚した者に過去と未来の知識を教え、人同士の不和を招いたり逆に和解させたりできる」らしく、元々の、悪魔としての設定に忠実な振舞いと言えましょう。思わずぞっとしてしまう、タマラ役の女の子の怪演も見事であります。

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唯一神のみが存在する世界にはきっと理不尽など存在せず、その矛盾から目を逸らすためにも、神には宿敵たる悪魔が必要なのだ、と改めて感じたのでした。