きっと、いい日が待っている
◆きっと、いい日が待っている
評価:名作
点数:45点
ネタバレあり
製作年:2016年
製作国:デンマーク
★あらすじ
『THE KILLING/キリング』のスタッフが、デンマークの社会問題を元に描いたドラマ。
養護施設に預けられた兄弟・エリックとエルマー。ヘック校長たちは生徒に体罰を加えており、上級生からもいじめられたふたりは、施設から逃げ出そうとするが……。
★一言感想
原題は「THE DAY WILL COME」
実話を基にした映画だそうです。
舞台は、1960年代のデンマーク。母子家庭で慎ましく暮らしていたエリックとエルマーの兄弟は、母の病気をきっかけに、児童養護施設に預けられることになります。
巷で評判がいい、と言われるその養護施設は、手に職をつけるためと称して子供たちに厳しい労働を課したり、日常的に教師からの体罰が行われたりしている、まるで刑務所のような、恐ろしい場所なのでした。
施設での初日、将来の夢は宇宙飛行士だと答えただけで、エルマーは教師に殴られます。彼らが暮らす施設では、子供たちは校長の操り人形。夢を持つ事すら『間違い』なのです。
過酷な境遇の中、懸命に生きる少年たちの姿が胸に迫ります。
注記:上のキャプションでアンフェタミンについて触れましたが、海外では未だ、アンフェタミンをADHDの治療薬として処方しているところもあるらしいです。
▽
エリックとエルマーの、大人顔負けの熱演も素晴らしいですが、悪役である校長先生の迫力溢れる演技もまた素晴らしいです。長身ですので、子供たちとの対格差が際立って見え、威圧感があります。
「いつか感謝する日が来る」との台詞からわかる通り、この校長先生も、悪意の塊のような人物ではなく、躾と言う名の体罰は正しく、将来子供たちのためになると思ってやっているだろうあたりに闇を感じます。残念な事ですが、こと現代においても、校長先生のような思想を持った大人は多いのでしょうね。
殊更に感動を煽る演出がないのも、本作の美点と言えましょう。派手な劇伴音楽、効果音等を極力排した演出は、養護施設の閉塞感を表現するかの如く抑制的。エリックでもエルマーでもなく、第三者の立場であるトゥーヤのナレーションを通して、少年たちの目線に寄り添うようにして描かれています。
二時間近い長尺の作品で、しかもヒューマンドラマときたら、中弛みしそうなものですが、本作は常に、先の読める部分と読めない部分を織り交ぜつつ、静かな緊張感を維持しながら進みます。エリックとエルマー兄弟の行く末が気になり、最後まで一気に鑑賞いたしました。
少年たちの受けた仕打ちを思えば、手放しにハッピーエンドとは言えませんが、微かに希望の光が灯り、物語は幕を閉じます。彼らが、どうか心穏やかに過ごせるよう願わずにはいられません。
実話である上に重々しい内容のため、もう一度見たい、とは思えないものの、心を揺さぶる、とても良質な映画でありました。お勧めいたします。