ぼんやり考察してみよう

日々考えたこと、映画感想、評価などを記しておくブログです。WPから移転しました。

スターシップ9

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◆スターシップ9

評価:普通

点数:85点

ネタバレあり

製作年:2016年
製作国:スペイン/コロンビア

★あらすじ
『ザ・エンド』のクララ・ラゴ主演によるSFドラマ。
エレナはまだ見ぬ未知の星を目指して、ひとり恒星間飛行を続けていた。ある日、スペースシップが故障し、エレナが近隣のスペースシップに救援信号を送ると、エンジニアの青年・アレックスが現れる。

★一言感想
原題は「ORBITER 9」

何を言ってもネタバレになってしまう作品であります。いつものように、ネタバレありの前置きを入れておりますが、再度、ネタバレがあります、と注意喚起を。おそらくは、鑑賞終了後に感想を見て回る方が多いかと思われますが、未見かつ、今後本作を鑑賞する予定があるようでしたら、ブラウザバックを推奨いたします。





エレナ本人は、人類の新天地となる星『セレステ』を目指して、宇宙を航行する宇宙船内にいると思っているのですが、実際にエレナがいるのは地球の、地下深くに作られた宇宙船を模したシミュレーターの中。来るべき本番に備えて、実験データを集める『オービター計画』のため、エレナは宇宙船を模したシミュレーター内に閉じ込められているだけなのでした。

そんな中、エンジニアのアレックスが、機器の保守点検の為との名目で宇宙船を訪れます。エレナは寂しい生活もあり、突如として現れた異性のアレックスに惹かれて、彼と関係を持ちます。アレックスもエレナを好きになり、二人は晴れて両想いとなります。

何も知らず、これから一生を孤独に過ごすであろうエレナの境遇は、無人の寺へと出家した尼僧の如し。不憫に思ったアレックスは、エンジニアの立場を利用してシミュレーターを再訪、エレナに真相を伝え、外の世界に連れ出すのでありました。

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※宇宙船の外は雑木林

エレナの生活する宇宙船が巨大なシミュレーターである、との真実が明らかになるのは、物語の終盤……ではなく、なんと開始18分。驚くと同時に、物語のラストを飾るレベルの大仕掛けを、最初に持ってきてしまって大丈夫なのだろうか、と不安に駆られてしまいますが、やはり、と言うべきでありましょうか、それ以降はあまり盛り上がりません。

『SAW』に喩えるなら、物語序盤でジグソウが起き上がって肉声で指示を出すみたいなものですから、明らかに常識外れの構成と言えます。宇宙船内で何らかの事件が起こり、最後の最後で、実はシミュレーターでした! とネタばらしするのが王道の構成でありましょう。製作陣としては、舞台設定の意外性にはそこまでの拘りはなく、エレナとアレックス、二人の関係を主軸とした物語を描きたかったのかもしれませんね。

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※宇宙、もとい雨中のキスシーンはぐっときます

ラストは、めちゃくちゃ無理矢理ハッピーエンドに着地した気がします。もう使い物にならないと言われたエレナが、妊娠、出産だけで宇宙シミュレーターに戻れたのも不思議ですが、邪魔する者は民間人でも無慈悲に射殺していたボスが、素直に二人の意向を汲んでくれて「よかったね!」みたいなノリなのもなんだか違和感が……? そんなゆるい判断でいいのなら、巻き添えで死んでしまった狼のおばさんことカウンセラーさんの立場がありませんぞ。

作中では明言がありませんが、二人の希望は『子供が地上で暮らす事』だったのでしょう。ジャンルはSFではありますが、SFが好きな人よりはむしろ、SFにあまり興味がない人の方が楽しめるかもしれません。