ぼんやり考察してみよう

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(r)adius ラディウス

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◆(r)adius ラディウス

評価:良作

点数:70点

ネタバレあり

製作年:2017年
製作国:カナダ

★あらすじ
『メッセージ』の製作スタッフによるSFシチュエーションスリラー。
リアムは交通事故を起こし、記憶を失くしたまま目覚める。助けを求め近くの町に入るが、目にするのは住民の死体ばかり。ようやく見つけた生存者は、近寄ろうとすると死んでしまい……。

★一言感想
原題は邦題と一緒であります。
直訳すると『半径』抽象的なタイトルで、タイトルを一読しただけでは内容がわかりにくいですが、パッケージの惹句『半径15メートル以内 全員即死』で、あらすじを読まなくとも概要が把握できる親切設計となっております。

昨今の子供向けエンタメ小説なら『記憶喪失になった俺はいつの間にか近寄る生き物が全部死んでしまう即死チートを身につけていたようです』とか、そんな説明文めいた、直截的なタイトルになるところでありましょうか。

あらすじでは、SFシチュエーションスリラー、となっておりますが、それだけでは終わらず、幾つものジャンルが綯交ぜになっているのが本作の面白いところです。物語の進行と共に、SFだったり、サスペンスだったり、ラブロマンスだったり、様々な顔を見せてくれます。
リアムが傍迷惑な即死能力を得た理由が“宇宙から飛来した謎の雷に打たれたから”で終わってしまいますので、SF成分を求めると肩透かしではありますが、その分、複数ジャンルを横断する物語展開の妙で楽しませてくれますので、物足りない事はありません。むしろお腹いっぱいになります。

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※結局のところ、この発光体の正体は何だったのでしょう?

ラストは……ううん、こんな能力をもらった時点で詰んでいると言いますか、やっぱり、そうするより他ないのでしょうね。雷に打たれて記憶を失う前のリアムだったら、罪悪感に苛まれる事もなく、喜んで能力を行使したかもしれないのが皮肉なところです。と言いますか、この即死能力は、記憶を失う前のリアムが抱いていた潜在的な願望を発光体が形にしたものではないでしょうか。それならば、この結末は、正しく因果応報。後味は悪いですが、これが全ての真実を知ったリアムなりの贖罪なのでしょう。

インパクト抜群のワンアイデアを軸に枝葉を広げたストーリーは、随所に工夫が凝らされていて、面白かったです。交通事故の場面、銃で撃たれる場面などを見る限り、明らかに低予算ですが、製作陣の頑張りによって、小規模ながら良質な作品になっております。