エンジェル 見えない恋人
◆エンジェル 見えない恋人
評価:良作
点数:60点
ネタバレなし
製作年:2016年
製作国:ベルギー
★あらすじ
恋人が謎の失踪をした事で、心を病んでしまったルイーズが産んだ息子のエンジェルは、誰の目にも姿が見えないという、不思議な特異体質を持っていた。ある日、エンジェルは家の窓から近所の屋敷を覗き見る。初めて見る外の世界、人の姿。そこにいた女の子のことが気になり近づくと、彼女は自然に話しかけてくる。その少女マドレーヌは盲目の為、自分の秘密に気付かなかったのだ。互いの存在を感じ合い、心惹かれていくが……。
★一言感想
原題は「ANGEL」
雨の中の少女に、誰かが赤い傘を差し出しているジャケットが目を惹きますね。
本作は、透明の少年と盲目の少女のファンタジーラブストーリーとなっております。
あらすじ以上の予備知識は仕入れず、予告編も見ずに鑑賞するのが私の流儀。
さて、この作品はどんな世界を見せてくれますやら……と、DVDドライブにディスクを挿入しようとして初めて、表面に燦然と輝く“アルバトロス”の文字に気が付きます。
(ウワーッ! アルバトロスだ! 総員、衝撃に備えよ! 来るぞ……!)
脳内でアラートが鳴り響きます。B級ホラー、サスペンス映画がアルバトロスの管轄なのはいつもの事、動揺はしないのですが、本作は雰囲気のよいジャケットに興味を惹かれて視聴を決めましたゆえ、まさかアルバトロスとは予想もしていなかったのです。思わぬ不意打ちを受けた格好になりますが、狼狽えていても仕方がありません。覚悟を完了して、視聴を開始します。
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いつの間にか視聴終了。
視聴前の心配はどこかへ消えております。真っ直ぐで、素敵な恋愛物語でありました。
これはアルバトロスの奇跡と呼ばれたアメリと似たパターンなのでしょうか。
色眼鏡で見てはいけないとは思いつつ、どうしてもアルバトロス配給作品は身構えてしまいますね。
本作は、大人のためのファンタジー、ですね。
物語はありがちなのですが雰囲気作りが上手いために没入感があります。
登場人物は透明の少年を含めても三人。他者不在の世界観からは、そこはかとなくセカイ系の香りも漂います。透明の少年にとっては、自分を認知して人間と扱ってくれる人々こそが世界の全てなので、少ないキャストは必然でもあるのでしょう。
「誰もいない森で倒れる木は音を立てるか?」とは量子力学初期の問いですが、透明の少年の存在もまた似たようなものと言えます。誰にも認知されないのならば、存在していないのと同じ事。このブログ、この文章も、読者たるあなたに読んでいただいて、初めて存在するのです。
フランス映画にしては爽やかだな……と思いましたら、ベルギー映画なのですね。
作中にピアノが登場しましたので書きますが、この物語には、ショパンのノクターン2番がよく似合う、と思うのでした。
透明の少年がマドレーヌ、マドレーヌと囁くので夜遅くにもかかわらずマドレーヌが食べたくなりました(どうでもいい)